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ブルーラジカル

ブルーラジカル

メスを使わずに歯周病の原因菌にアプローチするブルーラジカル治療は、2020年代に入り本格的に導入が進みました。ブルーラジカル治療とはどのような治療なのか、どのような仕組みで歯周病を治療できるのかを以下で解説します。

歯科治療

歯周病治療の新たな選択肢「ブルーラジカル治療」

ブルーラジカル治療は、光の化学反応を利用して歯周病の原因菌だけを破壊する、歯茎を切らない新しい歯周病治療です。ブルーラジカル治療は光線力学療法(PDT)の技術を応用したもので、歯周ポケットに特殊なジェルを注入し、注入部分に青色光を当てて歯周病の原因菌を殺菌します。

前述にもあるように、ブルーラジカル治療はメスを使わないため、手術のような痛みや腫れがほとんどなく、身体への負担が少ないのが特徴です。また、抗生物質を使わないため、薬が苦手な方やアレルギーがある方でも安心して受けられます。

ブルーラジカル治療の科学的メカニズム

ブルーラジカル治療が、どのような仕組みで歯周病の原因菌を殺菌するのかを以下で解説します。

光線力学療法(PDT)の応用

ブルーラジカル治療は、がん治療にも用いられる光線力学療法(PDT)の技術を、歯周病治療に応用したものです。光線力学療法とは、光に反応する特殊な薬と、特定の波長の光を組み合わせて、病気の原因となる細胞だけを破壊する治療法になります。

ブルーラジカル治療では、光線力学療法の技術を歯周病の原因菌の殺菌に応用しました。

青色光と色素の相互作用

ブルーラジカル治療は、専用ジェルに含まれる色素(光感受性物質)と、特殊な青色の光が化学反応を起こす相互作用を利用して、歯周病の原因菌を殺菌することが可能です。

まず、歯周病の原因菌が多く存在する歯周ポケット内に、光に反応する性質を持つジェルを注入し、歯周病治療器であるスケーラー先端部から、過酸化水素とそのジェルにだけ反応する特殊な波長の青色光を放出します。すると、光のエネルギーを受けたジェルから活性酸素が発生し、活性酸素の力で歯周病の原因菌を破壊できます。

細菌のみを標的とする選択的殺菌

ブルーラジカル治療は、歯周病の原因菌だけを狙って破壊し、健康な歯茎の細胞にはダメージを与えない選択的殺菌が可能です。治療で使うジェルは、歯周病の原因菌の膜に特異的に付着する性質があるため、ジェルに光を当てて殺菌作用が発生した際に影響を受けるのは、ジェルが付着した歯周病の原因菌に限られます。

周囲の正常な細胞を傷つけずに、歯周病の原因菌のみを安全に除去できるのがブルーラジカル治療の優れた点です。

ブルーラジカル治療で示されるエビデンス

ブルーラジカル治療の治験で、過酸化水素と青色の光を使って殺菌をした結果、高い殺菌効果を発揮しました。以下は、過酸化水素と光分解殺菌法で処理したあとの各種細菌の生存数を示したグラフです。

また、中等度および重度の慢性歯周炎患者に対して、東北大学病院歯科と一般歯科医院は、医師主導のもと、ブルーラジカル P-01(プロトタイプ)の有効性を示す治験をおこないました。その結果、ブルーラジカル P-01(プロトタイプ)と超音波スケーリングと併用すると、これまでの外科処置を伴わない歯周病治療よりも臨床的有用性があると結論づけました。

この治験から、ブルーラジカル治療が科学的根拠にもとづいた信頼性の高い治療法であるのが分かります。

ブルーラジカル治療で示されるエビデンス

出典参照:青色レーザーを応用した歯周病治療器「ブルーラジカル P-01」

ブルーラジカル治療の治療の流れ

ブルーラジカル治療の治療のを受ける際の流れは、以下の5段階です。

  1. カウンセリング・お口の状態の確認
  2. 精密検査と診断
  3. 歯周ポケットに専用ジェルを注入
  4. 特殊な青色光を照射
  5. 治療後のケアと再発予防のメンテナンス

治療の流れを1つずつ見ていきましょう。

STEP
カウンセリング・お口の状態の確認

カウンセリングでは、患者さんのお悩みや症状を伺い、お口のなかを視診して歯周病の状態を確認いたします。歯茎の腫れや出血の有無、自覚症状などをお聞きし、ブルーラジカル治療が選択肢となりうるか、どのような治療計画が考えられるかの概要をご説明いたします。

納得のいく治療結果を得るためにも、不安や疑問は遠慮なく質問し、治療への理解を深めたうえで治療法をご検討ください。

STEP
精密検査と診断

次は、レントゲン撮影や歯周ポケットの深さの測定といった精密検査をおこない、歯周病の進行度を正確に診断する段階です。歯を支える骨がどの程度溶けているかをレントゲン写真で確認し、プローブといった細い器具を使って、歯と歯茎の間の溝の深さを1本1本測定いたします。

検査結果をもとに歯周病の状態を正確に把握したあと、ブルーラジカル治療が最も効果的な治療法かを判断いたします。

STEP
歯周ポケットに専用ジェルを注入

診断にもとづいて治療計画に同意いただいたら、歯周ポケットの内部に専用のジェルを注入する段階です。注射器のような器具を使って、痛みを感じないようにゆっくりと丁寧に注入するため、麻酔の必要はほとんどありません。

ジェルが細菌に十分浸透するまで、約5〜10分間そのまま時間を置きます。

STEP
特殊な青色光を射照

ジェルが歯周病菌に浸透したら、治療が必要なすべての歯周ポケットの内部に、特殊な青色の光を向けて照射いたします。光の照射時間は1本の歯につき数十秒〜数分程度で、痛みや熱さを感じることはありません。

STEP
治療後のケアと再発予防のメンテナンス

治療後は塗布したジェルをきれいに洗い流し、今後のセルフケアの方法や注意事項の説明を受けて完了です。ブルーラジカル治療は副作用がほとんどなく、治療当日から普段通りの食事や生活ができます。

しかし、歯周病は生活習慣病の一種であり、治療後も再発させないための継続的なケアが重要です。正しい歯磨きの方法を身につけるとともに、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受け、健康な歯茎の状態を維持しましょう。

ブルーラジカル治療のメリット

ブルーラジカル治療のメリットは、以下の4つです。

  • 外科的処置の回避
  • 痛みが少ない
  • 治療期間が短い
  • 再発リスクが低い

1つずつご紹介します。

ドクターのイラスト

メリット1:歯茎を切らずに治療できる

ブルーラジカル治療のメリットは、歯周病が進行した場合でも、歯茎を切開する外科手術をせずに治療できる点です。従来の歯周病治療では、歯周ポケットの奥深くの歯石を取るために、メスで歯茎を切る必要がありました。

しかし、ブルーラジカル治療では、特殊な光とジェルで歯周病の原因菌に直接アプローチするため、歯や歯茎へのダメージを最小限に抑えられます。

そのため、ブルーラジカル治療は、外科手術が怖いと感じる方でも安心して受けられる治療です。

メリット2:痛みや腫れがほとんどない

ブルーラジカル治療は、歯茎を切らないため、治療中や治療後の痛み・腫れがほとんどありません。歯周病の手術では、麻酔が切れたあとの痛みや、数日間続く腫れが避けられないのが実情でした。

しかし、ブルーラジカル治療は、歯周病菌のみを狙って殺菌し、健康な組織を傷つけないため、身体への負担が少なく、治療当日から普段通りの生活を送れます。

ブルーラジカル治療は、ダウンタイムを気にされる方にもおすすめな治療法です。

メリット3:1回あたりの治療時間が短い

1回の治療時間が短く、忙しい方でも通院しやすいのが、ブルーラジカル治療のメリットの1つです。お口全体の検査やクリーニングの時間を含めても、1回の通院は30分〜1時間ほどで終わる場合がほとんどです。

ブルーラジカル治療は、外科手術のように大掛かりな準備や長い時間を必要としないため、仕事や学校で忙しい毎日を送る方でも、スケジュールを調整しやすい治療法になっています。

メリット4:再発リスクが低い

ブルーラジカル治療は、歯周病の根本原因である細菌に直接アプローチするため、治療後の再発リスクを抑えられます。ブルーラジカル治療は、通常の歯石除去では届きにくい場所にいる細菌まで、光の化学反応によって徹底的に殺菌できるため、健康な口腔状態を維持するのに効果的です。

ブルーラジカル治療後は定期的なメンテナンスをおこない、歯周病の再発防止に努めましょう。

ブルーラジカル治療のデメリット

ルーラジカル治療のデメリットは、以下の4つです。

  • 保険適用外のため費用が自己負担になる
  • 歯石を除去する効果はないため事前のクリーニングが必須になる
  • 重度の歯周病では複数回の治療が必要になる場合がある
  • 対応している歯科医院がまだ限られている

1つずつ解説します。

ドクターのイラスト

デメリット1:保険適用外のため費用が自己負担になる

ブルーラジカル治療は、現在のところ公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。ブルーラジカル治療は比較的新しい先進的な技術であり、まだ保険診療として認められていないため、保険が使える通常の歯周病治療に比べると、費用は高額になる傾向にあります。

歯科医院によって価格設定が異なるため、事前に費用を確認するのが大切です。

デメリット2:歯石を除去する効果はないため事前のクリーニングが必須になる

ブルーラジカル治療は歯周病の原因菌を殺菌する専門の治療であり、歯に付着した歯石や歯垢を物理的に取り除く効果はありません。ブルーラジカル治療の効果を最大限に引き出すためには、光を当てる前に、歯周ポケット内の歯石や歯垢をきれいに除去しておく必要があります。

そのため、基本的には保険診療で歯のクリーニングをおこない、補助的な治療としてブルーラジカル治療をおこなうのが一般的です。

デメリット3:重度の歯周病では複数回の治療が必要になる場合がある

歯周病が広範囲におよんでいたり、重度に進行していたりする場合、一度のブルーラジカル治療だけでは十分な効果が得られず、複数回の治療が必要になる場合があります。ブルーラジカル治療は高い殺菌効果を発揮できますが、一度に処置できる範囲や、1回で殺菌しきれる菌の量には限界があります。

重症な歯周病ほど、複数回に分けて繰り返し光を照射し、徹底的に歯周病菌を減らしていく必要があるため、治療回数が増え、全体の費用や期間が増える点を事前に理解しておきましょう。

デメリット4:対応している歯科医院がまだ限られている

ブルーラジカル治療は、導入している歯科医院の数が限られており、どこでも気軽に受けられる治療ではないのがデメリットです。比較的新しい治療法であるため、専用の機材を導入していることや、治療に関する専門知識と技術を持つ歯科医師がいるのが必須となります。

お住まいの地域によっては、ブルーラジカル治療を受けられる歯科医院がなかなか見つからない場合もあるため、治療を希望する方は、まずWebサイトで導入している歯科医院を探してみましょう。

日本歯周病学会所属の歯科医師が在籍している当院では、ブルーラジカル治療を導入しております。歯周病治療をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

参照:世界初の歯周病治療器「ブルーラジカルP-01」導入歯科一覧|株式会社エーゼット

ブルーラジカル治療がおすすめな人

歯周病の手術は怖いと感じている方

歯茎を切るのが怖いといった理由で歯周病治療をためらっている方には、メスを使わないブルーラジカル治療がおすすめです。従来の歯周外科手術は、歯周ポケットの奥深くをきれいにするために歯茎の切開が必要でしたが、ブルーラジカル治療は特殊な光とジェルの化学反応で歯周病の原因菌を殺菌できます。

そのため、手術に対する恐怖心や不安を感じずに、リラックスして治療を受けられます。ブルーラジカル治療は身体的な負担も少ないため、外科手術に抵抗感のある方におすすめな治療法です。

薬(抗生物質)をあまり飲みたくない方

持病がある方やアレルギーなどで、抗生物質(飲み薬)の服用を避けたい方にも、ブルーラジカル治療は安心しておこなえる治療法です。歯周病の治療では、細菌を抑えるために抗生物質が処方される場合がありますが、副作用やほかの薬との飲み合わせが心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ブルーラジカル治療は、光の力で歯周病の原因菌を直接殺菌するため、薬が必要がありません。身体に優しく、アレルギーの心配もないため、持病のある方やアレルギーのある方、薬の服用を避けたい方は、ブルーラジカル治療を検討してみましょう。

治療後の痛みや腫れが心配な方

治療後の痛みや腫れ、ダウンタイムが心配な方にとって、ブルーラジカル治療はおすすめの選択肢です。歯周病治療で歯茎を切開する場合、治療後におこる数日間の痛みや腫れは避けられませんでしたが、ブルーラジカル治療は、歯周病の原因菌だけを狙って破壊し、健康な組織を傷つけません。

治療中はもちろん、治療後の痛みや腫れもほとんどなく、当日から普段通りの食事や生活を送れるため、痛みや腫れが心配な方は、ブルーラジカル治療がおすすめです。

よくあるご質問(Q&A)

保険は適用されますか?

ブルーラジカル治療は、現在(2025年時点)公的医療保険が適用されない自由診療となります。そのため、治療費は全額自己負担です。費用は歯科医院によって異なりますが、歯1本あたり11,000〜16,000円程度が目安になります。

ただし、ブルーラジカル治療は、年間の医療費が一定額を超えた場合に税金が戻ってくる医療費控除の対象です。カウンセリングの際に、総額でどのくらいの費用がかかるのか、医療費控除の利用条件にご自身があてはまるかを事前に確認してみましょう。

治療期間はどのくらいですか?

1回の治療時間は30分〜1時間程度で、症状によりますが、1〜2週間に1回のペースで数回通院するのが一般的です。歯周病の進行度合いによって必要な回数は異なり、軽度の場合は1〜2回、中等度以上の場合は5〜6回程度の治療が必要になる場合があります。

ブルーラジカル治療は、外科手術のように一度で終わるわけではありませんが、1回あたりの負担が少ないのが特徴です。全体の治療期間は、ご自身の歯周病の状態をもとに、歯科医師と相談して確認しましょう。

誰でも治療を受けられますか?

ブルーラジカル治療は身体への負担が少ないため、基本的にはほとんどの方が受けられますが、一部対象外となる方もいます。たとえば、光に対して過敏に反応してしまう光線過敏症の方や、妊娠中の方は、安全を考慮して治療が受けられない場合があります。

また、重度の心臓病やてんかんなど、特定の持病をお持ちの場合も注意が必要です。ご自身がブルーラジカル治療を受けられるかどうかは、事前に健康状態を正確に伝えたうえで歯科医師へご相談ください。

治療後の注意点はありますか?

治療当日は、飲酒や激しい運動、長時間の入浴など、血行が良くなる活動は避けましょう。ブルーラジカル治療は痛みや腫れはほとんどありませんが、治療直後の歯茎はデリケートな状態です。

血行が促進されると、まれに痛みや出血を引き起こす場合があります。食事は通常通りとれますが、硬いものや刺激物は避けるのが無難です。また、治療効果を長持ちさせるためにも、日々の丁寧な歯磨きを心がけましょう。

ブルーラジカル治療をご希望の方へ

鎌倉市・湘南深沢のグリーン歯科では、歯周病治療にご不安な方でも安心して受けていただけるよう、最新設備を用いたブルーラジカル治療を導入しております。

ブルーラジカル治療は、歯茎を切らず、術後の痛みや腫れもほとんどない、光を使った新しい治療法です。

歯茎を切りたくない方や術後の痛みや腫れを避けたい方で、ブルーラジカル治療を検討している場合は、ぜひ一度グリーン歯科へお気軽にご相談ください。患者さんに合った最善の治療法を一緒に見つけていきましょう。

藤林征雄